映画 感想

その剣戟は殺し愛である。


私が紹介させていただく映画は、2007年に公開された本格的時代劇アクションアニメ映画「ストレンヂア 無皇刃譚」です。
ストーリーは「名無し」と名乗る刀を封じた男と不死の妙薬を作るために贄として選ばれた少年仔太郎、そして明から来た異人の男羅狼を中心に展開します。
12年前の作品である上にアニメ作品なんて、敬遠されるかもしれませんが、この作品には今、多くの人気作品で圧倒的な映像美を魅せている優秀なアニメーターの方々の若い力が惜しげもなく手描きで披露されているのです。
まず引き込まれるのは、冒頭の野武士と羅狼の戦闘シーンです。
曇天の中、雨のように降り注ぐ矢をくぐり抜け、野武士を次々と倒していく羅狼のアクションを盛り立てるように響く太鼓の音が、これから起きる物語を期待させられます。
この冒頭シーンで見ていただきたいのは、カットインするスタッフ名です。
通常、監督や演出、キャラクターデザイナーは表示されますが、この作品は5名の作画スタッフの名前も冒頭で表示されます。
ボンズの南社長曰く、この素晴らしい作品を作りげた作画スタッフをエンディングロールで流すわけにはいかない、どうしても名前を出したいという事でした。
冒頭の荒々しいシーンの後、少年仔太郎と愛犬飛丸が古寺で、「名無し」と出会います。
この「名無し」を演じているのがTOKIOの長瀬智也さんなのですが、正直キャスティングが決まった時には少し心配でありましたが、蓋を開けてみたら、朴訥で過去に傷を持つ名無しを見事に演じきっておりました。
「名無し」と相対する「羅狼」は声優界の実力者山寺宏一さんが演じているのですが、中国語の台詞にも果敢に挑戦し、静かで同時に剣に関しては熱い男を魅せてくれます。
この作品はキャラクターのバックボーンは、わずかな過去シーンと状況からでしか語れません。
難破船から救い出された異人でありながら倭人として武士として生き、そして過去の戦より刀を封じた名無し、西洋人でありながら明国に仕え、倭の国に来た羅狼、そして倭人でありながら、明国で育った仔太郎、彼らはいずれの場所でも異人であり、どこにも馴染めないような雰囲気を漂わせています。
その彼らの人生が混じり合い、己が信じるものに向かって戦う姿は恐ろしさと美しさと感じさせます。
ラストの名無しと羅狼の戦いは、アクション作画で名高い中村豊さんが手がけています。
息も出来ない剣戟を是非その目の納めてください。

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